プレスルーム

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2月25日発売の岡崎市のタウン誌「リバ!!」に、ハウジングアイチの建築家・大塚が取材を受けました。「名古屋めしを代表する“うなぎのひつまぶし”を守れ!」というタイトルで、名古屋の老舗料亭「あつた蓬莱軒」さんでのリフォームの様子を紹介していただきました。



 みなさま「あつた蓬莱軒」をご存知でしょうか。名古屋めしを代表する「うなぎのひつまぶし」を筆頭に、明治六年から続く、うなぎ料理で有名な老舗料理店です。こちらのお店と建築が結び付く方は少ないと思いますが、実はこうしたこだわりの名店だからこそ、専門的な技術を用いた調理環境が必要なのです。

 西尾市にあるハウジングアイチは、あつた蓬莱軒の大改修をした建築会社。おかかえ大工としての歴史は昭和にさかのぼります。ある日、あつた蓬莱軒本店からハウジングアイチに問い合わせがありました。それは、「焼き台が壊れてしまったので直してほしい」というものでした。

 同社で建築設計を行う大塚慎也さんは、様々な建築材料に精通する建築の専門家。「あつた蓬莱軒」の調理場を訪れてみると、骨組みが大きく曲がった焼き台がありました。「あつた蓬莱軒」ではおいしい鰻を焼くために炭火焼で調理をしています。味に直結する炭火の焼き台はある意味、お客様に見えている店内のイメージ以上にとても重要なものです。この焼き台、大変な高温になる上に、火加減の調整をするために木炭を叩き割るので、その打撃に耐える強度も必要です。

「店舗の休みのあいだに仕上げてほしい」という板長さんの要望もあり、今回はリフォームだけで直すという難題に挑戦しました。曲がった骨組みを残したまま、その骨組みを頼らずに耐火レンガを自立させるがごとく積み上げていきます。

 それは熱膨張を想定したり、耐火レンガの自重を考えつつパズルのように組み替えていく作業で、左官職人の細かい加工も伴って、新調するよりも難易度の高い挑戦でした。しかし、問題は焼き台に不可欠なロストルといわれる材料が入手困難な状態にあったことでした。これが無いと炭火の微調整ができず、味を守ることができない。そこで大塚さんは国内外のメーカーを探し商社に問い合わせしながら独自に調達したのです。無事に火力調整が可能な焼き台が完成し、明治六年から続く名店の味は守られることになったのです。

 担当した大塚さんは「焼き台を納入し始めた当初は大変な苦労があったと前任者から聞いています。あつた蓬莱軒さんほど、フル回転で鰻を焼いている焼き台はないでしょう。焼き台はかなり過酷な使用状況です。歴代の板長と二人三脚で試行錯誤しながら焼き台の技術が培われました。今回はリフォームだったので、現状の劣化状況に応じて補強する策を考えました。さらに、部材のロストルを特注し、試作品を持ち込んでは耐熱実験を繰り返し、ようやく板長の要望に叶う焼き台が完成しました。店の前に並ぶお客さんの長蛇の列をみると自分の手柄のようで嬉しいですね」と語ってくれました。

取材・文/株式会社 リバーシブル 浅井朋親