コラム

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「技術は見て盗め」という考え方。どんな業界においても、たびたび耳にすることだと思います。私自身も手取り足取り教えてもらったわけではなく、自分なりに試行錯誤した経験によって、技術を習得してきました。だからでしょうか。「技術は言語化できないものなのだ」と思い込んでいました。

考えを改めるきっかけとなったのは、咬み犬を専門に預かる北栃木愛犬救命訓練所の訓練士・中村信哉先生との出会い。ご縁に恵まれ、「ペットと楽しく暮らす家DouTano」の建築家・大塚と私の2人で特別指導を受ける機会をいただきました。そこで体験した中村先生の指導は、目からウロコの連続。犬への指示の方法やリードの持ち方、立ち位置など、ひとつひとつの動作すべてを具体的に示してくださいました。それは長年の経験から習得した感覚や勘のような、言葉で説明しにくい曖昧な部分でさえも明確に言語化しているものでした。この経験は、私の考えが甘えであったことを突き付けるものでした。そして、人に技術を伝えるためには、指導者側としてもう一段階成長しなければならないとも痛感しました。自分が技術を習得しただけでは足りない。今持っている技術をもっと深く掘り下げ、追求したその先で、人に教える指導者としての技能を手することができるのだろうと思い至りました。

中村先生は今、自分の引退後、咬み犬に困る飼い主の行き場がなくなってしまうかもしれないと危機感を持ち、2人の弟子を育てています。単純な手順だけでなく、感覚的な部分までも明確に言葉にして伝えること。そうすれば、中村先生の技術そのものを手渡すことができます。これが意味するのは、技術習得の効率化。中村先生のレベルに到達するまでの時間を短縮し、そこに本人の経験が積み重なることで、その技術はさらに発展していくことでしょう。そして同時に、中村先生から弟子へ、そのまた弟子へと繋がっていくことで、咬み犬の矯正技術は徐々に世の中に広がっていくだろうと思います。

自分の技術のすべてを言語化して伝えることで、さらなる技術の発展と広がりが期待できる。その未来こそが私の目指すところでもあり、後を追って技術の継承に挑んでいきたいと思っています。